あっという間に、また1年が終わろうとしています。毎年この時期になると、「今年はどんな1年だったか」を振り返るのが習慣になっていますが、今年ほど時代の変化を強く実感した年はありませんでした。私は証券会社に在籍していた頃から、時代の流れを肌で感じる仕事に携わってきました。その中でも、人材エージェントという仕事は、そうした変化をより一層はっきりと感じさせてくれます。
なぜなら人材紹介という仕事は、さまざまな業界・企業と関わり、そこで働く方々の生の声を日常的に聞く仕事だからです。「今、どんな人材が求められているのか」「企業の中で何が起きているのか」「次に、人はどこへ向かおうとしているのか」。こうした一次情報が、常に集まってきます。企業側の課題と個人側のキャリアの悩み、その両者の間に立つからこそ、社会の変化がリアルかつ解像度高く見えてくる。改めて、そうした仕事だと感じています。
その中で、今年を一言で表すなら、間違いなく「時代が大きく切り替わった年」でした。言うまでもなく、その中心にあるのは AI革命です。AIという言葉自体は以前からありましたが、今年は「一部の人が使う最先端テクノロジー」ではなく、誰もが日常的に使う実務ツールとして、一気に広がりました。この1年で、企業の採用方針や組織・業務設計、そして個人のキャリア観に至るまで、確実に変化が起きていると感じています。
今年感じた3つの大きなトレンド
今年を振り返る中で、特に強く感じたトレンドが大きく3つあります。
1. AIプラットフォーマーがIT・SaaSを飲み込み始めている
一つ目は、AIプラットフォーマーの台頭です。これまでSaaSとして提供されていた多くの機能が、「まずChatGPTやGeminiで試す」「AIで解決できないか考える」といった発想に置き換わり始めました。
もちろん、すべてのSaaSが不要になるわけではありません。ただし、「AIを前提に設計されていないサービス」は、確実に厳しくなると感じる場面が、この1年で急激に増えました。企業側も、「ツールを増やす」という考え方から、「AIでどこまで代替できるか」を真剣に考えるフェーズに入っています。
2. 思考系・タスク系の仕事が、AIに置き換わり始めた
二つ目は、仕事の構造そのものの変化です。資料作成、情報整理、リサーチ、文章作成、簡単な分析など、これまで人がやるのが当たり前だった仕事の多くが、AIで十分に代替できるようになりました。
これは、いわゆるデスクワークだけの話ではありません。営業を含むノンデスクワーカーの領域においても、同様の変化が起きています。「まとめる」「考える」「提案を作る」といった領域にまでAIが入り込むことで、人に求められる役割は確実に変わってきています。
単に作業をこなす人ではなく、「何をどう判断し実行するのか」「人としてどのような価値を出せるのか」。こうした部分が、より重要になっていくと感じています。
3. 大量採用の時代は終わった
三つ目は、採用の考え方の変化です。大手企業、スタートアップ、ベンチャー企業など、規模を問わず、「利益を度外視した大量採用で、トップラインを伸ばす」時代は終わりつつあります。
これからは、「いかにAIをうまく活用できるか」「少人数でどれだけ高い生産性を出せるか」「組織を身軽に保ちつつ、継続的に利益を生み出せるか」。こうした視点が、企業経営の中心になっていくはずです。実際に現場でも、人を増やす前にまずAIで何ができるかを考える企業が明らかに増えています。
来年以降の展望
これらの流れを踏まえると、来年以降は次のような変化が起きると考えています。
- 「業界・職種を超えた労働者の移動が増えていく」
AI時代でも生き残れる仕事、あるいはAIと共存して価値を発揮できる仕事へ労働者がシビアに動くようになる。 - 「AIが実務レベルで担える領域がさらに拡大する」
実験的な活用ではなく、日常業務としてAIを使いこなすことが当たり前になる。 - 「少人数でも高い売上規模を持つ企業が、今後ますます増えていく」
人数=企業規模ではなく、AI前提の「業務設計力」と「活用力」が、企業価値を決める時代になっていく。
Smacieが目指す、これからの姿
Smacieも、こうした時代の流れをただ眺めるのではなく、自ら変革できる会社でありたいと考えています。今期も増収増益を見込んでいますが、単に売上を伸ばすことが目的ではありません。人口減少・AI時代においてAIを積極的に活用し、より少ないリソースでより高い価値を生み出し、しっかりと利益を出せる会社を目指していきます。
人材紹介という仕事自体も、AIによって形を変えていく領域だと思っています。だからこそSmacieは、「人だからこそできる価値」に、これまで以上に向き合っていきたいと考えています。この1年で見えてきた変化を、来年の成長につなげていく。そんな1年にしてまいります。
引き続き、Smacieをどうぞよろしくお願いいたします。
井上 智弘
